体内時計

人は体内時計というのを持っている、という話をよく聞く。

こと騎手という職業の人間はそれが正確だという話もよく聞く。

たしかに、あんな何キロも走って最後はハナ差とかで決着がつくのだから、さぞ正確な体内時計を持っているのだろう、と誰もが思うはずだ。

それを検証してみたい!と考えるのもおかしくない発想で、以前テレビ番組で某有名騎手が、目を閉じてストップウォッチで1分を計る、という企画があった。

結果これが見事に5秒くらいズレた。

なんだ、騎手に体内時計なんてないじゃん、と僕はその時以来信じなくなった。

ところが、今日それを覆すことが起きた。

友達と先日の宝塚記念について話してたときのことだ。

話が騎手の体内時計の話へと発展すると、僕はそれを真っ向から否定するのもどうかと思い、まあ体感速度とか周りの景色とかそんなのもあるのかもねー、と話をやり過ごそうとした。

そのとき僕の中で何かがフラッシュバックした。

それは朝の通勤時の駅までの道のりだ。

ギリギリ人間の僕はいつも電車に間に合うギリギリの時間に家を出る。

1分くらい出るのが遅かったり、また途中で信号に引っかかったりすることもある。

それでもなぜか不思議と電車にはギリギリ間に合うのだ。

秒刻みで時計を見てるわけではないのに、だいたいこのくらいでコンビニの前を過ぎて、だいたいこれくらいで改札に入れば間に合う。

というのが体感的にわかっている。

僕はあのホームまでの時間を体内時計で計っているのだ。

そういえばチャリで高校に通っていたときもそうだ。

30分くらいかけて通っていたが、ほとんど遅刻することはなかった。

通学や通勤で同じような経験をした人は多いはず。

おそらく騎手もレース中に同じことをやっているのだろう。

ところが、もし、あなたがドラえもんの世界の小学生だとして、朝いつものように自分の体内時計で通学していたとき、後ろからトーストをくわえたのび太が猛然と追い込んできたらどう思うだろう?

あれ?このペースだと間に合わないんじゃね?

と思うはず。

たぶんそれが宝塚記念で起きたのだ。

向こう正面でのデムーロのあの動き。

あれこそがのび太

それに惑わされた前の馬たちは見事全滅。

惑わされなかった後ろの馬が2、3着となったのだ。